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2002年12月10日

デジタル写真論

フィルムとデジタルの違いを理解する


    ■フィルム撮影とデジタル撮影の作業の違い

      まず始めに、フィルム撮影とデジタル撮影の作業の違いを整理してみました。

【図1】フィルム撮影による作業の流れ

【図2】デジタル撮影による作業の流れ

      要するに、フィルム撮影では、フィルムメーカーや現像所が担っていた役割の 部分まで、デジタルカメラとPCソフトウエアが受け持つようになったのです。

■デジタルは銀塩フィルムを超えられるか?

    ここ数年、デジタルカメラの画質が向上してくるに伴い「デジタルカメラの画質は銀 塩フィルムを超えられるか?」 という議論が盛んに繰り返し行なわれてきました。
    これは、言ってみれば”デジタルカメラの画質はまだ銀塩フィルムを超えていない” からであり、また ”デジタルカメラの画質はいずれ銀塩フィルムを超えるだろう”という期待感だから ではないでしょうか。
    また、フィルム愛好者の中には、”デジタルカメラには銀塩フィルムを超えて欲しく ない”という逆の期待感 を抱いている人も多いように思います。

    フィルムには、フィルムならでの味わい(フィルムルック)があります。 それは、しっとりとした質感、シャープでありながら強すぎない輪郭感、豊かな階調 といった”暖かさ””優しさ””品の良さ”といった、決して数値でスペック化できない ものです。

    今現在(2002年11月)のデジタルカメラでは、このような「フィルムルック」な味わ いまで 完璧に表現できているとは残念ながら言えません。 でもいずれ技術者のがんばりで、見た目ほとんどフィルムと同じような味わいを 真似ることができるでしょう。
    現に、映画の世界では、ハリウッドでも日本でも 「フィルムルック」を再現できるデジタルハイビジョンカメラでの撮影が昨年〜今年 (2002年) に急増しています。もちろん、今のデジタルハイビジョンカメラでも、「フィルムル ック」を 完璧に再現できていると認められているわけではありません。映画をビジネスととら えれた時、 画質以外のコストや効率といったトタールバランスで判断した際に、デジタルハイビ ジョンカメラ でも行けるというひとつの判断がなされただけなのです。

    写真においても多くのカメラマン(プロやハイアマチュア)は、最高画質のフィルムカメラ を決して選択していません。最高画質を求めるなら大判カメラを使用すべきですが、 フィルム面積では大判の1/10以下の35mmサイズカメラがもっとも多く使用されています (特に水中では、中判以上は、0.1%も いないかも?)。
    これは、画質以外の要素(機動力、コストパフォーマンス等)とトレードオフ した結果、35mmサイズカメラが適切だと判断されたわけです。

    同じようにフィルムカメラか?デジタルカメラ?かという選択も画質のみが判断基準にはなら ないのではないでしょうか?

■”フィルムルック”の再現

    ビデオ(CCD)の映像と映画(フィルム)の映像を見比べるとわかるように、 もともとCCD(CMOS)とフィルムでは、出力特性(色や階調の表現)が異なるものです。 デジタルカメラの場合、CCD(CMOS)の出力特性を強引にフィルムに似せることで、 従来のフィルムカメラと同じ感覚で写真を撮ることができます。一眼レフデジタル カメラでもISO感度を設定し、内蔵露出計で測光し、絞りとシャッター速度を決める という手順はフィルムカメラの場合とまったく同じです。

    これは個人的意見ですが、写真でも映画でも何がなんでも「フィルムルック」を完璧 にデジタル で再現する必要は無いのでは?と思っています。 なぜならフィルムでの映像表現が究極の完成形であったわけでも無のですから。 ひとつの映像表現の手段として多くのクリエーター達に長年愛されてきた 映像表現として位置付けられればよいわけです。それはフィルムでの映像表現 というひとつの文化なのです。 デジタルはデジタルでさらなる技術の進歩で、新たな方向性が見い出せれば、デジタ ル独自の 映像表現の進化を目指して「フィルムルック」の真似からの脱却があって良いのでは 思います。 デジタルでの映像表現という新しい文化を作ればいいのではないでしょうか。

    とはいいながら、”画質”という点だけをクローズアップして、 フィルム v.s. デジタル という論争は当分の間は繰り返されるでしょう。 それは、現場のカメラマン(プロでもアマでも)にとって、 「フィルムからデジタルへの買い替え時は?」という現実的な判断材料したいとか 「フィルムを使い続ける事の自分への言い訳」や 「デジタルを使う事の自分への言い訳」という気持ちの拠り所にしたいという 誰もが欲している情報だからかもしれません。

■”画質”とは?

    ところで、”画質”っていったい何なんでしょう?

    1995年のQV-10登場以降、デジカルカメラは、CCDの画素数のアップこそ画質の向上を いわんばかりに 画素数競争が繰り返されきました。
    多くの一般ユーザーは、今でも「CCDの画素数が多い=高画質」と思っているでしょう。 しかし、小型サイズのCCDに300万画素、400万画素と無理やり画素を詰め込む事が、 そろそろ限界(画質の面で)に達し、ようやく「ダイナミックレンジ」や「レンズの 解像度」 といった他の画質の要因にも関心が向けられるようになりました。

    ダイナミックレンジ(階調が識別できる最小輝度と最大輝度の比)」は、1画素あ たりの大きさが 大きいほど有利であり、「レンズの解像度」は1画素が小さくなる程、高解像度が必要と なりコストアップや光学的な限界がネックとなる為、高画素数では、それなりの大き さのCCDのサイス が必要であるという事なのです。

    一般的に、フィルムに比べCCD(or CMOS)はダイナミックレンジが狭く,特にハイライ ト特性が弱い といいわれています。これは実際にデジタル一眼レフカメラを使ってみれば誰もが実感できます。 一方、 シャードー部に注目すれば、フィルム(リバーサル)に比べダイナミックレンジが広 く見た目以上に階調が 豊富であることもわかります。

    広ダイナミックレンジという事は、高性能であることなのですが、 写真表現にとって広ダイナミックレンジが必ずしも”良”とはいえません。 広ダイナミックレンジな写真は、どちらかといえば、”メリハリの無い、眠い”絵の 印象が強く なります。もちろん、これはガンマカーブ(トーンカーブ)の作り方次第で、印象を 変える事が できます。そこで重要なのが階調の情報量(RGB各8bit,12bit,16bitとかいう指標)です。

    フィルムでは、ネガフィルムは広ダイナミックレンジ(ラチチュードが広い)で、な だらかな(軟調)ガンマカーブ(トーンカーブ)をし、ポジ(リバーサル)フィルムは狭ダイナミック レンジ(ラチチュードが狭い)で、 めりはりのある(硬調)ガンマカーブ(トーンカーブ)をしています。
    デジタルとフィルムの大きな違いは、フィルムは銘柄によってガンマカーブ(トーン カーブ)の 階調特性まで決められてしまっているのに対し、デジタルはガンマカーブ(トーン カーブ)を撮影者自身の判断で自由に変える事ができる点です。
    bit数をむやみに増やす意味はありませんが、実際の階調の情報量が伴った16bit以上 が実現できれば、”階調表現ではデジタルはフィルムを超えた”と言える程、非常に豊富な情報量といえます。
    よくCCD(CMOS)の画素数と印刷解像度の関係から、「○○万画素では、○○サイズのプリント サイズ」のような言われ方をしますが、適切な階調の情報量が豊富であれば、かなりの 引き伸ばしが可能です。逆に言えば、高解像度でも階調が不適切(輪郭強調等の加工処理をされている場合) であれば、引き伸ばしには耐えないと言われています。

■適正露出を考え直す

    カメラ内蔵の露出計(反射光式露出計)は、標準反射率18%グレーを 基準に適正露出を定めているという事はご存知のことと思います。
    従来の銀塩フィルムカメラでは、この18%グレーを中心に 約-3EV〜+3EV幅がフィルムのラティチュードとなります。

    そして、デジタルカメラ内蔵の露出計においても、標準反射率18%グレーを 基準に見た目の印象が銀塩フィルムの場合とほぼ同じになるように作られています。

    元々CCD(やCMOS)は、銀塩フィルムとは異なる出力特性を持っています。 これはビデオ(CCD)と映画(フィルム)の色調の違いを見ればよくわかります。
    デジタルカメラではフィルムとは異なる出力特性を信号処理で無理やり銀塩フィルム の特性に似せているので、デジタルカメラの写真でも見た目の印象が銀塩フィルムで 撮影した写真と変わらないように見えてるわけです。
    このおかげで、我々は従来の銀塩フィルムカメラでの撮影方法とまったく同じ感覚 で、デジタルカメラでも撮影できるわけです。
    しかし、これによる弊害だと思われますが、デジタルカメラは、フィルムに比べて ハイライト特性があまり良くありません(ハイライト部の階調が乏しい)。 逆にシャドー部の特性(シャドー部の階調が豊か)はフィルムより優れているようです。
    デジタルカメラでの撮影において、後処理を前提とするならば、18%グレーを基準に 適正露出を決めるという考えに拘る必要は無いのです。
    要するに、写真に再現したい画面内の最大輝度と最小輝度をダイナミックレンジ内に 収まる(つまり、ヒストグラムが極端に偏らない)ように露出を決定するという事が重要なのです。

    たとえば、南国の白砂のビーチの上で白っぽい貝殻を撮影するような場合、従来のフィルム撮影では 18%グレー基準の露出に対して、+2.5EV前後という極めて大胆なプラス補正をして撮影 しなければなりません。一方、デジタルカメラで撮影する場合、内蔵露出計通り(つまりプラス補正無し)に撮り、 後で、現像ソフトで見た目を調整するという手法を使うことで、白砂や貝殻の細かな模様のディーテール を残しつつハイキー調の写真を作る事ができるのです。
    おそらくデジタル一眼レフカメラであれば、どの機種でも撮影直後に撮影画像とヒストグラム や白トビを表示させる機能があります。LCD上に映し出される撮影画像の見た目の明るさより、 ヒストグラムが両極端に偏っていない事、原則として白トビが無い事がデジタルカメラにおける 適正露出といえます。
    もちろん、これはRAWデータで撮影し、現像ソフトでの後処理を前提とした話で、JPEGで一発で決めて 撮りきり(後処理をしない)の場合は、従来のフィルム撮影と同じ露出の決定法となります。

■デジタルの欠点を知る

    デジタルカメラにはフィルムカメラには無いさまざまなメリットがあります。 しかし、まだまだデジタルカメラには多くの欠点があるのも事実です。 考えてみれば、フィルムカメラにも多くの欠点があり、それを知り、それを避けて、 時には逆手に利用してきたのです。

    デジタルカメラにおいても同様で、まず欠点を知るという事が、上手に使い こなすということにつながります。

    以下、欠点として思いつく点をまとめてみました。

    レンズの相性

      一眼レフデジタルカメラはレンズとの相性があります。 多くはAF(オートフォーカス)の精度が落ちるというものですが、 描写にも影響が出るものもあります。インターネット上で盛んに情報交換が 行われています。レンズメーカーによっては相性情報も公開されています。

    電池寿命

      デジタルカメラは電池寿命が短いという印象を持っている方も多いと思いますが、 一眼レフデジタルカメラに関しては決して短くありません。電池寿命が短いデジタルカメラ の多くは、液晶画面をファインダー代わりに使用しる為、リアルタイムにCCDを動作させ映像を液晶に 表示していた為に電池の消耗が激しかったのです。 一方、一眼レフデジタルカメラは、ファインダーは従来の光学式、CCDはシャッターを押した 瞬間のみ駆動し、撮影画像の液晶表示は撮影後の数秒間のみなので、十分な省エネ化が実現 されています。

    データの損失

      デジタルカメラは、画像データをうっかり消してしまってダメだと言う人がいます。 これはデジタルカメラの欠点ではなくデジタルデータの扱いに慣れていないという だけの話です。フィルムでも巻き戻す前にうっかりと裏蓋を開けてしまう、ISO感度の 設定ミス、現像ミス、空港荷物検査X線照射、フィルムの紛失、フィルムの傷、等等、扱いミスによる 損失(破損)はいくらでも起こり得ます。
      デジタルデータの扱いにさえ慣れれば、オリジナル品質のまま延久に保存する事が可能なのです。

    CCD(CMOS)のゴミ

      デジタルカメラも一眼レフになることで、レンズ交換時にカメラ内部に侵入するゴミの問題が 新たに発生しました。レンズ交換時に最新の注意を払う、定期的に掃除を行う、 万が一の時は、レタッチソフトでゴミを消す、という対処を行うことになります。

    階調特性

      デジタルカメラの大きな欠点の一つがハイライト特性が悪いという点です。 つまり、高輝度部(ハイライト)の階調がフィルムに比べて乏しいのです。 しかし、低輝度部(シャドー)の階調は、むしろフィルムより優れているので 適正露出の決め方を工夫する必要があります。

    長時間露光

      もう一つのデジタルカメラの大きな欠点が長時間露光によるノイズです。 数十秒〜数分以上の長時間露光には残念ながら現行のデジタルカメラは十分に 対応できてるとは言えません。(それなりの努力はされていますが。)

    回折現象/絞り回折/小絞りボケ

      これはフィルムカメラにも当てはまる欠点ですが、絞りを絞り過ぎると 光の回折現象で画像が甘くなる(ボケる)現象です。
      コンパクトデジタルカメラの最小絞りがF8程度までしか無いように、小型CCDほど 回折現象の影響が受けやすくなります。現行のAPSサイズの一眼レフデジタル カメラは、有効最小絞りはF11〜F16程度ではないか?と言われています。 交換レンズにはもともとF22〜F32まで絞りがありますので注意が必要です。

    偽色

      細かい模様の部分に、本来ありえない色が出ることです。 これは、かなり改善されていると思います。

    フレアスポット

      レンズの内面反射のフレアのように、CCD(CMOS)の鏡状表面による内面反射のフレアがあります。 これも、光源を直接写すような場合に現れるものですから、事前にテスト撮影を行い 症状を確認し対策をします。
      私はまだフレアスポットが気になった事はありません。

    各種ノイズ 、マッハバンド、モアレ

      デジタル画像のノイズ には、さまざまな種類があります。 しかし、現状では実使用ではほとんど気にならないレベルといえるのではないでしょうか。 当然、メーカー側ではさらなる改善を試みていますので、必要以上に神経質になる ことはないと思います。
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