[水中写真とシーサイドフォト・TOP][エッセイ・メニュー]

非現実を追求する写真、現実を追求するCG

近年の映画では、あたりまえのようにCGが使用されるようになって来ました。 ひと昔の映画でCGといえば、SF等の特撮ものと 決まっていましたが、今ではごく普通の映画で、それがCGであるとは判らないように、 自然に使われています。
 CGが世に登場した頃は、「いかにもCGで作りました」というような、 「自然なものには見えない」もの、デジタルな創造物的なものがCGだった わけですが、いつのまにかCGらしくないCGへ、つまり、より自然なもの、よりリアルなもの (ほとんど現実のものと見分けがつかないもの)、 普通の人にはCGだと気づかないCGへと変化(進化)して来ています 。誰が見てもCGだとバレてしまうものは、今では時代遅れのCGとなってしまったのです。

1970年代の始め、シンセサイザーの「ピコピコ音」を全面的にフィーチャーした音楽、 テクノの元祖(当時はプログレッシブロックの一ジャンルのような位置付け?「クラフトワーク」等)が登場し、 「これこそ未来のサウンドだ」 と注目された時代がありました。
 当時としては今まで聞いた事が無かった電子サウンドが、とても先進的な印象を与えてくれた 事には違いありませんが、 結局は、その一時代のみのブームで終わってしまったのです。(その後は、どちらかといえば アンダーグランドな音楽ジャンルでしょうか?)

シンセサイザーもCGと同じように、「いかにも電子的(デジタル的)」な楽器 から、「従来の楽器の音色をリアルに再現する楽器」へといつのまにか変化(進化) して来たのです。今ではデジタル音源はあらゆるジャンルの音楽で利用され、一般の人の耳では デジタル音源の音と本来の楽器の音と区別することはほとんど不可能です。

さて、話題を写真の話に変えます。いわゆる「いい写真」とはどういう写真なのでしょうか? 模範回答は「良いシャッターチャンスを捉えた写真」とか「構図の良い写真」ということでしょうか。
「シャッターチャンス」とは、チャンスという位ですから、貴重な瞬間であればあるほど 良い「シャッターチャンス」です。
 「構図の良い写真」とは、より洗練された絵、完璧な絵、無題のない絵、つまり、なにげなく 過ごしている実生活で見ている風景とは、ちょっと違う見え方、視点といえるものだと思います。
 たとえば、プロの撮った綺麗な風景写真をじっくり見てください。「構図が良い」という事は当然 だとして、無駄な物がほとんど写り込んでいないはずです。ゴミとか、電線とか、ちょっと見た目の よろしくない人物とか、建物とか、看板とか。。つまり、「いい写真」は、絵にならないもの(=目障りなもの)をいっさい 画面から取り除いて撮られている事が重要です。(もちろん逆手にとって利用するという別の視点もありますが、 ここではその話は置いておきます。)
 しかし、現実社会は、有名な観光地は人だらけ、ゴミだらけ、特に日本は景観なんかどうでもいいように 建物を建てたり電柱建てたりで、「いい写真」が撮れる場所はなかなかありません。

逆にいえば、無駄な物がほとんど写り込んでいない完璧な構図、完璧なシャッターチャンスを捉えた写真の 価値が高くなるわけです。つまり写真は、非現実を追求し現実ではほとんど目にできない瞬間を 捉えたものが「いい写真」として認められる(認められ易い)のです。

しかし、写真で撮るには非常に難しい構図やシャッターチャンスでも、CGで作るのは比較的簡単です。 皮肉な事に、せっかく苦労して撮った完璧な写真も、CG技術の進歩のせいで、「これってCGじゃないの?」 「どうせデジタルでいじってるでしょう?」なんて疑われてしまう世の中になってしまいました。

一方、CGでは完璧な構図、完璧なシャッターチャンスはいくらでも可能です。 なので、CGをCGっぽく見せない為、つまりより現実世界に近い実写のように見せる為に、 写真を撮るカメラマンとはまったく逆の事をするのです。
 綺麗な被写体はわざと汚します。綺麗な街並みはゴミで散らかし、電線を引き回して景観を悪くします。 「レンズフレア」とか「ゴースト」というのはカメラのレンズに太陽光線などが直接が入って画質を落とす レンズの欠点だったわけですが、CGソフトにはこのようなエフェクト機能が沢山あります。わざと ノイズを追加したり、手ぶれをさせたり、ピンボケさせたり、空気を濁らせたり、霞ませたり、絵を汚くするような機能がCGソフトでは 売り文句なわけですね。
 こんな感じで、カメラマンの発想とはまったく逆の発想で、CGはどんどん実写っぽくなり、 現実味が出てきて、CGには見えない「いいCG」となるのです。

 もっとも、コーマーシャル(工業製品や建築など)のCGは、実物より綺麗なままでより 実写的(リアル)ですばらしいものが作れる時代になりました。 CGもわざわざ絵を汚くしてCGらしさを無くし、現実味を出しているうちはまだまだ未成熟なもかもしれません。
(2005年10月3日)