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色の話いろいろ

前々回のデジタルカメの話を書いた後、 職業柄デジタルカメラに関わっている専門(ライター、印刷関係者、出版関係者)の方々 いろいろとデジタルカメの話をする機会があった。
いずれの方も、趣味でも写真(主にフィルム)を撮っているので かなり本質的な話ができたと思う。
まず話題になった話は、
「今のデジタルカメラ(コンシューマー用)で撮った写真で、高品質なカラー印刷が可能なのか?」
という話だ。
結論は、
「デザイナー(=入稿者)と印刷所(=オペレーター)の能力に依存する。」
といった内容だった。
一般的に、印刷はCMYKデータ、デジタル写真はRGBデータで 色の再現域的には、RGBの方が広いわけだから、ちゃんと RGB→CMYK変換すれば、現状レベルのカラー印刷は可能なはずだ。
しかし、現実は、RGB→CMYK変換はそう簡単にはいかない。
RGB→CMYK変換は非常に奥の深いテーマで、本気に突き詰めようとすると それだけで専門書一冊分の知識が必要だ。
結局、現場(カメラマン、デザイナー、印刷所のオペレーター)のノウハウ に100%依存しているのが現状らしい。
現場の人間がこのノウハウが持ち合わせていないと、 「デジタルカメラのデータは高品質カラー印刷には向かない」 という印象を与えるような結果になってしまうようだ。

次に話題になったのが 「銀塩フィルム同等といえるデジタルカメラのスペックは?」という 話だ。
「フルサイズ」という表現が一般的な表現であるかどうかわからないが、 私の周りの人は、35mmフィルムサイズ(36mmx24mm)CCDの事を「フルサイズ」と呼んでいる。 そして、「銀塩フィルム同等といえる最低限のスペック」として「フルサイズ」である という事では全員の意見が一致した。

「フルサイズ」である事を前提として、解像度はいくつ必要なのだろう? その時は感覚として、最低1000万画素以上では?」という話だった。
CCDの解像度を論じる時、気をつけたい事は、CCDでは単純に明るさの明暗情報、 つまりモノクロの情報しか得られていないという点だ。いわゆるデジカメでカラー 写真が撮れるのは、カラー画像に変換する為にCCDの各ドットにRGBのフィルター を割り付けているためである。
つまり、ドット3個分(実際はRGGBフィルターで4個分の場合が多い)でやっと カラーを表現できている。そういう意味では、600万画素とはいえ、1画素でRGBカラー という視点でみると150万画素程度という事になる。

ビデオカメラでは、プロ用やコンシューマー向けのものでもハイエンドモデル は、3CCD(三板式CCD)が使われていることはここを読まれている方なら皆さんご存知でしょう。 RGB3色別のCCDを3枚持っているので、CCDの解像度の数値そのもののカラーデータが得られている。
そして、単版式の100万画素CCD搭載モデルより、三版式の35万画素CCD搭載モデル の方が高画質&高性能である。(一画素の大きさが大きい程、性能面で有利になる為)

プロ用デジタルカメラでは、単板式 でも「3ショットタイプ」というデジカメがある。
これは、名前の通り、RGB3色分を3回に分けて別々に撮影しくみになっている。

つまり、「3ショットタイプ」または「三板式」ではじめて、本来のCCDの画素数同等のカラー画像の ピクセル数となる。
ピクセル数という表現は、PCで表示される画像データは、1ピクセルでRGB各色 の階調(=フルカラー)を表現できるという意味で、画素という表現と区別して一般的に用いられる。


さて、ここで改めて、「35mmサイズ銀塩フィルム同等といえるデジタルカメラのスペック」を理論的に計算して みることにした。
フジフィルムがホームページで公開しているフィルム(ベルビア)のスペックは、

ベルビアの解像力
TOC 1.6:1 のローコントラストで、80本/mm
TOC:1000:1のハイコントラストで、160本/mm

です。
これをフルサイズ(36mmx24mm)CCD搭載のデジカメで実現する為には、
80本/mm → 2880 x 1920 = 550万画素
160本/mm → 5760 x 3840 = 2200万画素

という計算になる。

前々回のデジタルカメの話でも書いたように、性能面では解像度だけでは無く ダイナミックレンジも非常に重要である。
一般的な銀塩フィルム(リバーサル)のダイナミックレンジは、3.6(OD)と言われている。
ダイナミックレンジはlog(最大の輝度/最少の輝度)で計算されるので、 3.6(OD)ということは、(最大の輝度/最少の輝度)=約3000、つまり3000階調という 話になる。
つまり、12bit (4096階調)の階調処理能力が必要という話になる。
単純な理論計算で求められた35mmサイズ銀塩フィルム同等のデジカメのスペックは、

12bit  2200万画素 3CCD(or 3ショット)


ということになる。
繰り返すが、あくまでもこれは、単純な数字の計算にすぎない。

個人的には、3CCDや3ショット方式を採用しなくとも、アルゴリズム(信号処理)次第で は、単版式でも実現できるような気がする。
なぜなら、人間の目は、輝度には敏感だが、色には鈍感だといわれているからだ。
ちょっと専門的な話になるが、輝度、色差(R-Y,B-Y)という言葉をご存知でしょうか?
YUV(YCrCb)=4:1:1とか4:2:2とかいう風に表現されてるものだ。

たとばば、DV方式の家庭用デジタルビデオは、非常に綺麗だが、
これは、「4:1:1」で、輝度情報が4に対して色情報は1の割合しか情報を持っていない。
写真画像の圧縮でメジャーなJPEG圧縮も基本的には、 4:1:1や4:2:0というように輝度の情報量に対して、色の情報を少なくして圧縮して いるが、写真の画質は充分綺麗だ。
つまり、色に鈍感な人間の目の性質を利用して、データ量を省いているわけだ。

そう考える、3CCD(or 3ショット)でなくても、高解像度で輝度情報だけは得られているわけ だから、アルゴリズム次第で満足できるものができるのかもしれない。
まぁ、いわゆる単版の1ショット方式デジカメは、そうやって画像補間をしているわけだから さらなるアルゴリズムの向上に期待したい。

数字の話がつづいたので、少し話題を変えてみよう。
一般的に、哺乳類は色に鈍感だ。
多くの哺乳類はほとんど色を認識できない。もともと哺乳類は、夜行性 だったからだそうだ。

逆に、昆虫は、色に敏感だ。 紫外線も認識できるらしい。
考えてみれば、昆虫にはカラフルな種類が多い。仲間を認識する為に、色に敏感 になったと考えれば納得できる。
逆に、哺乳類には、カラフルな種類はほとんど居ない。だから、色に鈍感なんだろう。
そう考えると魚や鳥もカラフルな種類が多いから、彼らもきっと色に敏感なのだろう。
でも、熱帯の魚はカラフルだけれども、冷たい海の魚は、地味で色がない。
ということは、冷たい海の魚は、色を認識できないのかもしれない。

ある水族館で、魚に足し算の問題を出すと答えを当ててしまうという芸をやっていた。 種明かしは、答えの数字に紫外線を当てる事 で魚がそれを選ぶというしくみだ。
昆虫や魚のように色に敏感な生き物は、紫外線も認識できるようだ。

逆に、魚には赤い光がみえないという話がある。
ビデオ撮影をする一部のダイバーやアクアリストの間では、最近では常識と なりつつあるようだ。
もともと赤い光は水中で最も吸収される光だから、魚が認識できなくても不思議な話ではない。

ちなみに、人間は肌色に関しては敏感に見分けることができるらしい。
「顔色が悪い」という表現があるが、太古の昔から、「顔色」を見分けて病と闘ってきた為、肌色に 関しては敏感なのかもしれない。
同様に緑色にも人間目は敏感だ。だから、単版式CCDには、グリーンのフィルターがレッドやブルー より多い。緑色、つまり植物は人間が生きて行く上で最も大切な自然界の色だからだろうか。

外国人の撮った写真を見てよく感じる事だが、”赤色”の使い方が日本人とかなり感覚が違う。
日本人には”赤色”がどぎつく感じるものが少なくない。 おそらく、”赤色”の感度が、日本人と欧米人で違うのだろう。目の色素の違いを見れば 当然なのかもしれない。
国産のフジフィルムの発色に比べて、米国産のコダックは、やや赤味が 強い。
水中ビオデの世界でも、欧米人は赤いフィルターを特に好んで使う傾向がある。
ところで、男性と女性でも赤色の感じ方が違うらしい。女性には男が持っていない遺伝子で赤色を さらに敏感に見分けているという話だ。 (2001年04月06日)



(2002年09月19日追記)
このエッセイを書いてから1年半後、とうとうNikonの一眼レフデジタルカメラ「D100」を買った。
「D100」は、上記した目標のスペックには及ばない23.7x15.6mmサイズCCD、600万画素、RGB各12bit仕様だ。
実販価格で20万円そこそこだったので、とりあえず将来の本格的一眼レフデジタルカメラ時代到来の前に慣れ親しんでおこうと思ったのだ。
2002年9月現在、35mmフィルム一眼レフカメラをベースにしたフルサイズ(35x24mm)CCDの一眼レフデジタルカメラ は、CONTAX N DIGITALのみだ。同9月に開催されるフォトキナで、CANON EOS-1Dsが発表されるようだ。
フルサイズCCD一眼レフデジタルカメラが現実になってきた事は非常に嬉しいが、一方で、35mmフィルム一眼レフカメラ をベースにする事のデメリット情報(マウントサイズ、レンズのテレセ ントリック性)もオープンになってきて、 しばらくは市場も混沌としそうな雰囲気だ。